校長講話(定時制)

校長講話(定時制)

令和三年度入学式式辞

 正門前の桜も花から新緑へと装いを変え、まさに若い命が躍動する季節がめぐってまいりました。春本番を迎えたこの良き日に、保護者の皆様方のご臨席を賜り、令和三年度埼玉県立浦和高等学校定時制課程入学式を挙行できますことは、本校関係者一同の大きな喜びでございます。ご臨席いただきました保護者の皆様に、厚く御礼を申し上げます。

 

 ただいま入学を許可いたしました16名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。在校生、教職員を代表して、皆さんの入学を心より歓迎いたします。

 また、保護者の皆様方におかれましても、お子さまのご入学おめでとうございます。心よりお慶びを申し上げます。

 

 本校の定時制課程は、旧制の敬和中学校として昭和十六年に併設され、昭和の戦中・戦後を経て、平成、そして令和と、八十年の歴史と伝統を有しています。これまでに二千人を超える卒業生が、それぞれの時代の様々な社会状況の中、この浦定で学び、着実に実力を身に付け、社会へあるいは上級学校へと巣立ってまいりました。

 

 さて、今世界は気候変動など地球自然環境の急激な変化に見舞われています。人類による地球資源の開発等により、地球の温暖化がかつてないスピードで進んでいます。少子高齢化や地方の過疎化、生産年齢人口の減少などの社会課題も極めて深刻な問題です。AIやIoT、ビッグデータといった新たな価値の創造により、世の中の価値観も生活スタイルも大きく変わりつつあります。二十一世紀を迎えて久しい今日に至り、ますます先がどんな時代なのかが見えない、劇的な変化の只中にあるといっても過言ではありません。

そこに、新型コロナウイルス・パンデミックという過去百年に人類が直面したことのない緊急事態がおこりました。「民主主義」や「市場経済」を根底から揺るがす危機とさえ言われるような事態です。

  浦高の先輩である佐藤優氏は、最近の著書で「新型コロナウイルスの全世界的流行によって二十世紀の残滓は消え、二〇二〇年から本当の二十一世紀が始まった、というのが私の作業仮説」であるとしたうえで、「新しい世紀において、新自由主義が世界を覆いつくすのか、そんなグローバリズムへの反動が来るのか、あるいはヨーロッパで先行して見られる環境ファシズムみたいな運動が力を持つのか、もしくは全然違った勢力地図が出来上がるのか、そこはわからない。そんな海図なき時代こそが新しい世紀の特徴なのかもしれない。」と述べています。

  つまり、現代を生きる我々は、こうした様々な危機を乗り越えて、新たな世界や社会を構築していかなければならないということです。そして、皆さんは新しい発想で構築されるであろうこれから先の社会を、希望をもって前向きに生きていかなければなりません。その土台づくりをこれから四年間の浦定生活でしてもらうことになります。ですから、浦定での生活では、仲間とともに学び、積極的に関わり合い、そして思い切り楽しんでほしいと思います。また一方で、社会の厳しさをしっかり認識しながら、卒業までに社会で自立できる地力を身に付けてほしいと思います。

 

 今日から浦定での生活が始まります。そこで、生活していくにあたっての心得をお話しします。

  一つは、「希望を持つ」ということです。これから先の人生では、もしも困難な状況、苦しい状況に陥っても、皆さんはそれを自分で乗り越えて道を開いていかなければなりません。そのためには、困難にも負けない、諦めない気持ちを持ち続けることが必要です。失敗は誰にでもあります。ですから、恐れることはありません。むしろ、失敗によって人は成長するのですから、失敗することはとても大切なことです。

  皆さんは、バスケットボール界の神様と言われたスーパースター、マイケル・ジョーダンをご存じでしょうか。彼はかつて、ある有名なテレビコマーシャルで次のように言ったそうです。「私は九千本以上シュートを外し、ほぼ三百試合で負けた。ウイニングショットを外したことは二十六回もある。」

 コマーシャルでわざわざ失敗した話をしたわけですから、それを見た多くの人は困惑したそうですが、失敗の大切さや、成功へのプロセスに失敗が欠かせないことを身に染みてわかっているジョーダンならではのエピソードです。どんな成功者もあこがれのスターも、そこに至るプロセスでは数々の失敗を繰り返し、悩み苦しんだ経験を経てきている。でも、その失敗で諦めることなく、希望をもってチャレンジを続けたからこそ、後に成功を手にすることができたわけです。

  その諦めない気持ちを持つコツこそが、苦しい状況でも希望を持ち続けることなのです。我々が生きる激動の時代は、待っていても先への希望など持たせてはくれないでしょう。それでも、希望を持つことさえやめなければ、皆さんの将来への道は必ず開かれます。

  浦定には、「浦定チャレンジ」という取り組みがあります。何かにチャレンジしてみようと思う。その前向きな意識が、まずは大事です。そして始めてみる、すなわち前に向かって第一歩を踏み出してみる。とにかく失敗を恐れず、何かをやってみるというチャレンジ精神こそ、皆さんの人生にとって本当に大事なことだと私は思います。浦定での生活で、自分で決めたいろいろなことに、是非ともチャレンジしてみてほしいと思います。

 

 もう一つは、「自分の頭で考えるための基礎を身に付ける」ということです。当たり前と思うかもしれませんが、ものを考えるという行為は、言語、つまり言葉を使ってなされます。つまり、考えることを可能にするには、それに必要なだけの言葉、語彙力がなければなりません。加えて、考えを深めるにはその分野の基礎知識がなければなりません。現代人が考える分野は、とても多岐にわたります。ですから、幅広い基礎知識を身に付けておくことも必要です。また、未知の分野に興味を持つこともあるでしょう。そのときのために、知りたい分野の情報を収集する方法もわかっておかなければなりません。皆さんには、これらのことを浦定にいる間に習得してもらいたいと思います。授業を中心にしっかりサポートしますから、安心してついてきてください。それから、深く考え正しく判断するには、日ごろから周りの人の話や意見をしっかり聞くことがとても重要です。自分の意見もしっかり聞いてもらい、議論をすることも大切です。コミュニケーションが大切だということです。では、周りの人と良好な関係を築くコツは何でしょう。それは、相手の良さを見つけることです。最近は、人を批判したり中傷したりする傾向が、特にSNS空間では強まっているようですが、それはコミュニケーションとは対極をなす行為です。皆さんには、まずは浦定の仲間とお互いの良さを認め合う、そんな関係を築いてほしいと思います。

 

 浦定は、少人数の教育環境を活かして、アットホームで一人一人としっかり向き合える学校です。加えて、地域の企業や自治会などと連携し、外の世界とも関わりながら社会で立派にやっていける一人前の大人になることを目指してもらいます。一人前の大人を目指すわけですから、浦定での生活においてもダメなものはダメです。あいさつをする、時間を守る、ルールを守るなどについて、浦定でも十分意識して生活してください。

 

 最後になりますが、保護者の皆様におかれましては、重ねて入学のお慶びを申し上げます。本日より、大切なお子さまをお預かりし、責任をもってお子さまの力をしっかり伸ばしてまいります。

  入学に際して、私からお願いがございます。高校生の頃というのは、様々なことに悩み葛藤する時代です。気持ちも揺れ動くものです。そんな揺れる思いを持ちながら成長していくのが高校時代だということをぜひご理解いただき、どうぞお子さまを温かく見守っていただきますようお願いいたします。

  私たち教職員は、浦定の教育に誇りをもって日々一生懸命取り組んでおります。是非、浦定の教育力を信頼していただくとともに、何かございましたら遠慮なくご連絡をいただき、家庭と学校とでお子さまの成長に向けて、歩調を合わせて取り組んでいけたらと思っております。何卒、御支援と御協力をお願いいたします。

 

 それでは、四年後の卒業式まで皆さんが浦定での生活を思い切り楽しみ、たくましい一人前の大人へと成長し、「浦定で高校生活を送れてよかった」と思っていただけることを心から願い、私の式辞といたします。

 

令和三年四月八日

埼玉県立浦和高等学校長 水石 明彦

 

三学期終業式

 皆さんこんばんは。

 令和2年度も終わりを迎えました。新型コロナウイルス感染防止に明け暮れた一年でした。緊急事態宣言はこの間の日曜日で解除されましたが、依然、もうしばらくは、感染防止策を講じつつの浦定生活となりそうです。

 

 さて、去る3月11日で、あの東日本大震災からちょうど10年となりました。被災された方の心の傷は癒えることはないでしょうし、復興への道のりもまだまだ道半ばです。我々は、震災から得られた教訓を決して忘れることなく、これからの世の中に活かしていかなければなりません。10年が経った今、改めてそのことを確認しておきたいと思います。 

 皆さんは、地震やウイルスといった自然の脅威を再認識することとなり、同時に目まぐるしく進行する激動の社会を生きていくことになります。新型コロナウイルスによるパンデミックが収束した後、世界はどうなるのかも全くわかりません。

 

 そんな未知なる未来を皆さんは生きていくことになる。そう考えたとき、皆さんがやっている「浦定チャレンジ」は、とても意味あるものです。

 何かにチャレンジしてみようと思う。その前向きな意識が、まずは大事。そして始めてみることは、前に向かって第一歩を踏み出すということ。

 とにかく失敗を恐れず、何かをやってみるというチャレンジ精神こそ、本当に皆さんにとって、皆さんの人生にとって大事なことだと私は思っています。

 皆さんの中で映画好きの人は知っているかもしれませんが、非常に有名なアメリカの作家であり映画監督でもあるウディ・アレンは、若いアーティストたちへのアドバイスで、次のように言ったそうです。 

 「人生で成功する秘訣の80%は、めげずに顔を出すことである。」

 この成功するには顔を出すことである、というのは、「まずは始めてみよ」ということでしょう。若いアーティストの多くは、自分を売り込むべく作品をもってやっては来る。あるいは、教えを乞いたくてやってくるのでしょう。そして自信作ですとか、精一杯頑張りますとか言って、作品ややる気をアピールすることでしょう。でも、それですぐより良い感触が得られるかといえば、たいていはそんなに甘くはない。すぐにはなかなか目をかけてはもらえない場合がほとんどです。そうすると、どうなるか。じきに来なくなる人がほとんどなのでしょう。

 でも、それでは成功はしない。めげずにまたやってくる。ちょっとしたアドバイスがそのうちもらえるかもしれない。もらえれば、その先が開けるかもしれない。だから、めげずに何度でもやってくる。成功するには、すぐに諦めるようではだめだよ。めげずに顔を出しなさい。そのくらいの忍耐力と我慢強さ、向上心が、成功するためには必要だよ、ということです。

 実際よくあるケースとして、やろうとは思っているが、なかなか始められない、取り掛かれないことって、皆さんも経験があるでしょう。私もあります。そもそも、物事をいざ実際に始める、取り掛かるということは、結構難しいことです。でも、それがなければ何も始まらない。そして、もっと難しいのがそれを続けることだということ。そのかわり、継続は力なり。継続する先にはきっと成功が待っている。がんばれ。これが、ウディ・アレンが若いアーティストに贈ったエールです。

 

 皆さんは、浦定を卒業すれば、就職、進学に関わらず、社会人としての振る舞いが求められます。一人の大人として、立派に生きていかなければなりません。

 そのとき、先ほど言った、失敗を恐れず何かをやってみるというチャレンジ精神が、とても大事となる。だから皆さんには、浦定にいる間に是非とも本気でチャレンジするという経験を何度か積んでおいてほしい。チャレンジする事の大小は問わない。たとえ失敗したとしても、これではだめなんだということを痛感し、失敗して悔しい思いをするという経験ができたのなら、人生にとっての大きな収穫です。その経験は、将来にとってきっとプラスになる。本気のチャレンジは、成功しても失敗してもやっただけの甲斐はあるということです。 

 チャレンジすることを見つけるのも、結構たいへんだとは思う。でも、大それたことでなどなくていい。例えば、自分の将来に少しでもためになることは何かと考えてみると、いいヒントが見つかると思う。

 ぜひ、来年度、まずは何にチャレンジしようかと、この春休み中から考え始めてみてほしい。そして、一歩を踏み出してみる。そして、やり続けられるかどうかにチャレンジしてほしい。

 

 4月8日、また元気で会いましょう。

 

第73回卒業証書授与式

 暖かな春の陽射しが降り注ぎ、早くも桜の開花する季節を迎えました。この春のよき日に、埼玉県立浦和高等学校定時制第73回卒業証書授与式を、保護者の皆様のご臨席を賜り、挙行できますことに深く感謝申し上げますとともに、心より嬉しく思います。

 9名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんが浦定に入学してから四年間の歳月が流れました。その間、世界は気候変動など地球自然環境の急激な変化とともに、少子高齢化や地域間格差などがますます深刻化しています。AIをはじめとするデジタル革命とグローバル化が並行して、急激な進行を見せています。まさに「激動の時代」の真只中にあります。そして、日本は平成から令和へと、新たな時代を迎えています。

 

 ちょうど十年前の3月11日、日本は東日本大震災に見舞われました。十年ひと昔とはいえ、被災をされた方々の生活がすべて日常に戻ったわけではありませんし、心に残った爪痕はそうそう癒えるものではありません。震災からの完全復興への道のりは、まだまだ道半ばです。私たちはこの震災を決して忘れることなく、防災意識の更なる醸成や危機管理体制の整備はもちろん、人と人とのつながりの大切さとその暖かみ、共助の意識など、この震災から得た様々な教訓をこれからの世の中に活かしていかなければなりません。

 そして今、世界は新型コロナウイルス・パンデミックに見舞われています。世界がまさにつながっていることを、改めて誰もが実感させられました。新型ウイルスの発生という自然現象に端を発して、一人一人の行動を介して世界全体に感染が拡大するという社会現象が起きました。震災と同様に自然の脅威を再認識させられる事態であり、一人一人がグローバルな社会での責任を自覚することを迫られています。

 皆さんのこの一年余りの浦定での生活にも大きな制約が課せられ、せっかくの修学旅行や遠足も中止となりました。持って行き場のない不安や苛立ち、ストレスなどへの対処に、皆さんも苦労したことと思います。

 

 このような変化と制約の中でも、皆さんは保護者の皆様をはじめ、多くの方々の思いに支えられて、本日無事に旅立ちの日を迎えました。

 浦定での四年間の日々は、皆さんにとっても様々なことがあったことと思います。アルバイトとの両立に苦労したことや夜学ぶことの辛さを感じたこともあったかもしれません。欠席がかさみ進級が危うくなったこともあったかもしれません。

 日々の授業や給食、部活動での取組や様々な行事において、仲間とともに楽しみ、励まし合い、先生方からは時には強く説諭され、時には励まされ、皆さんは大きく成長したことと思います。この一年の様子を見ても、浦定という場で仲間への気遣いや下級生への気配りを見せながら、居心地よさそうに生活する姿には本当に感心しました。

 

 その皆さんも今日で浦定を卒業し、次なるステージへと踏み出していくことになります。そんな皆さんに、私からの最後のメッセージを贈りたいと思います。

  皆さんが生きていく現代は「激動の時代」であり、価値観が多様化した予測不能な世の中です。新型コロナウイルスによるパンデミックの先行きもまだまだ不透明ですし、パンデミック収束後の21世紀がどのような世界になるのかも全くわかりません。このような時代だからこそ大切なことは、自分の「思い」をしっかり持つことです。そして、「自分の頭で考え行動する」ことです。そのためにも「勇気を出して、まずは一歩を踏み出す」ことが何よりも大切です。 

 では、具体的にはどうしたらよいのでしょう。英文学者の外山滋比古氏の言葉を引いてみます。自分の頭で考えるようになるためには、「まずは体を動かすこと。そしてもう一つは、不幸とか、貧困とか、失敗とか、そういう辛い境遇から逃げないことだ。」

 

 これに関連することで、作家であり映画監督でもあるウディ・アレンは、若いアーティストたちへのアドバイスで、次のように言ったそうです。「人生で成功する秘訣の80パーセントは、めげずに顔を出すことである。」

 どういうことでしょうか。顔を出すとは、「まずは始めてみよ」ということでしょう。やらなければとか、やろうとは思っていても、なかなか始められない、取り掛かれないことって、皆さんも経験があるでしょう。物事を実際に始めてみる、取り掛かることは、結構難しいことです。そして、もっと難しいのがそれを続けること。でも、「めげずに顔を出すこと」が成功の秘訣である、頑張れと、ウディ・アレンはエールを送ったのだと思います。粘り強く努力を重ねればきっと成功する、ということです。

 

 もう一人、バスケットボール界の神様と呼ばれるマイケル・ジョーダンは、かつてある有名なテレビコマーシャルで、わざわざ失敗の話をしてたいへん話題となりました。「私は9000本以上シュートを外し、ほぼ300試合で負けた。ウイニングショットを外したことは26回ある。」

 これも、数多くの失敗を経たからこそ今の成功がある。誰でも成功したくて努力をするわけだが、そのプロセスでは失敗が欠かせない。そのことを、ジョーダンほどの成功者だからこそ、あえて声を大にして言いたかったのではないでしょうか。

 

 どんな成功者も、多くの失敗を経験する道を必ず通ります。皆さんも、勇気を出して、まずは一歩を踏み出すことです。

 

 最後にもう一つ。今年の大河ドラマの主人公にして新一万円券の顔となる、埼玉ゆかりの三偉人のひとり、渋沢栄一が残した言葉に、「交際の奥の手は至誠である。理にかない調和がとれていればひとりでにうまくいく。」というのがあります。キーワードは「至誠」、つまり「誠実」であることです。

 物事に打ち込むうちには、失敗や挫折もある。迷うことも、悩むことも、落ち込むことも当然ある。やる気で始めた仕事でも途中で辞めたくなることもあるかもしれない。先が見えなくなりそうになることも、長い人生では度々あるだろう。でも、「誠実」でさえあれば、物事はいずれ必ずや自然と上手くいくものである。そう信じて、「浦定チャレンジ」の気概を持って、たった一度の人生を、価値あるものに創り上げていってもらえればと思います。

 

 最後になりますが、保護者の皆様におかれましては、ご子息のご卒業、誠におめでとうございます。重ねて心よりお慶びを申し上げます。四年間の浦定生活を全うし、心身ともに大きく成長した卒業生諸君の姿を前にして、とても頼もしく思います。

 この四年間、本校の教育活動につきまして格別のご支援とご協力をいただき、誠にありがとうございました。できますれば、今後とも浦和高校に対する変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

 

 結びに、卒業生全員が、社会で自立した一人前の立派な大人として、前途洋々たる人生を歩むことを心より期待して、私の式辞といたします。

 

令和三年三月十六日

埼玉県立浦和高等学校長 水石明彦

 

三学期始業式

 新年を迎え、3学期がスタートしました。

 しかしながら、年末から新型コロナウイルスによる感染が爆発的に拡大している状況となり、埼玉県を含む一都三県に昨日緊急事態宣言が発令されました。期間は2月7日までとなっていますが、延長されることになるとの声もすでに出始めている状況です。

 県内すべて県立学校は活動を継続しますので、浦定も基本的には通常の授業を継続していきますが、遅くとも午後9時前には下校できるようにします。緊急事態宣言下ですから感染予防の更なる徹底が求められることは言うまでもありません。確認すると、

① 何よりも、規則正しい生活習慣の徹底し、体調管理に努めること。そして、もしも体調不良の際には登校せずに、医療機関等に相談すること。

② 手洗いの徹底と適切な換気と保湿、マスクの着用を徹底すること。

③ 不要不急の外出をさけること。

④ 生徒のみでの会食の自粛と、食事中の会話禁止を徹底すること。

 以上の4項目については、改めて確認のうえ厳守してください。

 感染防止には、各個人一人一人の自覚がまずは第一。そして、我慢すべきことは我慢しつつ、前向きにできることをしっかりやっていくことが求められます。

 

 さて、今年は丑年です。「牛」は古くから人々を助けてくれる大切な生き物で、大変な作業を最後までこなす働きぶりから、丑年は「我慢」を表す年とも言われているそうです。ここまでだと、文字通り感染拡大が収まるまではひたすら「我慢」せよ、ということになってしまいそうですが、続きがあります。

 「我慢」を表す年ということから、丑年には先を急がず目の前のことを着実に進めることが、将来の成功につながっていく、とされているのだそうです。これだと、今年は将来の成功につなげるためにできることをしっかりやっておく年だ、という先ほど言ったことと同じになります。

 では、「できることをしっかりやる」にはどうしたらよいか。それは、「やることは自分でやると決意してやる」ことです。

 「やれと言われたから」とか言って、やらされているかのような意識でやっても、多くの場合大した成果は得られません。やれと言われたからやるのと、自分でやろうと決意してやるのとでは、その人の取組自体に大きな差が出ます。

 なぜか。言われたからやるという意識の人は、うまくいかないときにそのことをやれと言った人のせいにしてしまう。「やれと言ったからやったけど、ちっともうまくいかないじゃないか。どうしてくれるんだ。」となるわけです。そもそも、言われたからやっている程度の意識では、本気になどなりません。だから、うまくいかないことがしばしばおこる。

 でも、自分でやる決意をしたなら、うまくいかないときにその責任は自分で持つことになる。自分でやると決めたのだから、人のせいにはできない。だから、そうならないように頑張ろうと思えるし、実際本気でチャレンジできる。その姿勢があるから、困ったときには周りが助けてくれたりもする。結果としてしっかりやれる、うまくいくことにつながるわけです。さらに、決意して本気で取り組んだことなら、その結果を問わず、やったことへの満足感が得られる。自分なりにやることはやった。やってよかった、と思える。例えば、部活動を本気で頑張った人は、ここ一番の試合に負けたとしても自分がやってきたことには満足感も誇りも持てる。その感覚はわかるでしょう。

 大事なことは、「やることは自分でやると決意してやる」。そうやっていると、仮にやることが多くて忙しくなっても、その忙しさが楽しさにつながる。充実感を味わえるようになる。そういうものです。

 今日は、「やることは自分でやると決意せよ」という話でした。

 お互い、体調管理には十分留意して、3学期を充実したものにしましょう。

 

二学期終業式

 今日はクリスマス・イブです。キリスト教では、イエス・キリストの誕生日がいつかということは語られていないそうで、12月25日というのはキリストの生誕を祝う日だということです。では、なぜ12月25日を祝う日としたのか。有力な説としては、当時の社会ではそもそもこの日に大きな祭りを行う風習があったそうで、現に当時のローマではこの日は祝日であったそうです。そして、この祝日は「征服されることなき太陽の誕生日」として祝われていました。この「太陽の誕生日」とはどういう意味なのか。実は、秋分が過ぎて冬至に向かって昼間の長さがどんどん短くなってきます。これは太陽が沈んで、つまりこの世からなくなり、世界がこのまま闇に包まれてしまうのではないかと想像させるような変化です。それが冬至を境に昼間がまた伸び始めることから、つまり太陽がまた昇ってくる、太陽が誕生するということで、冬至の次の日が太陽の誕生日というわけです。当時の冬至は12月24日だったことからこの太陽の誕生日が12月25日となり、その日をキリストの生誕を祝う日、つまりクリスマスとしたのが4世紀初頭だということです。長々と説明しましたが、こんなことを知っていると、冬至はクリスマスの少し前であることがわかるわけです。ちなみに今年は12月21日でした。

 

 さて、今年も残すところわずかとなりましたが、結果的に新型コロナウイルス・パンデミック対応に明け暮れた一年となってしまいました。この年末年始に感染拡大の危機感がまた高まっており、年末年始の活動自粛が要請されるとともに、学校も部活動の活動中止期間が1月17日まで延長されることになってしまいました。来年になっても、しばらくはこの事態が続くことを覚悟しておく必要があります。

 こんな状況になったとき、中にはできないことを嘆いたり、怒ったり、そうして腐ってしまう人もいます。できないことを他人のせいにして、自分が思うようにできないのは周りのせいにする人も見受けられます。でも一方で、いつものことができなければ、その代わりにどうするか、何ならできるか、この危機をどう生かそうかと、前向きに「臨機応変」に対処している人もいる。人としてどちらがタフか、どちらが逞しく自分の未来を切り拓いていけるかといえば、後者であることはわかるでしょう。

 物事を人のせいにしているうちは、大きな成長は望めません。なぜなら、人のせいにするということは、自分の事として考えることから逃げてしまうということです。責任から逃げて思考停止しているということです。それでは成長できるわけがない。自分の将来には自分で責任を負わなければなりません。だから、自分なりに前向きに精一杯考えもするし、正しいと思う判断をする。当然、失敗することもある。でも、自分なりに前向きに精一杯やってみようと思う気持ちさえあれば、必ず道は拓けてくるものだと思います。そして、逞しく世の中を生き抜いていくだけの力もついてきます。

 

 昨今は、効率ばかりを追い求めていて、寄り道は無駄だと思われているようなところもありますが、実は心に「余裕」を持っているかがとても大事です。余裕がなくなると判断ミスはするし、物事うまくいきません。落ち着いて、余裕をもっていてこそ、人は持てる力が発揮できるものです。ですから、時には寄り道するもよし、立ち止まるのもよし、だと思います。その代わり、自分なりに前向きに精一杯やってみようという気持ちを忘れない、自分の事として考えることを忘れない、それが大事です。

 明日からはゆったりとした気持ちでリフレッシュをして、どうぞ良いお年をお迎えください。また、1月8日に会いましょう。