校長講話(定時制)

一学期終業式

 今日は、ラグビーの話をします。オリンピック開幕直前なのに何でと思うかもしれませんが、実はイングランド、スコットランド、アイルランド、ウエールズという世界のラグビーをリードするイギリス、アイルランドの4協会が、4年に1度だけ合同で編成するドリームチーム、その名もB&Iライオンズが、今まさに南アフリカに遠征中なのです。そして、いよいよ今週末から2年前のワールドカップ優勝の南アフリカ代表スプリングボクスとのテストマッチ3連戦が始まります。この世界のラグビーファン羨望のライオンズが、実は今回の遠征に先立ち6月にエジンバラで何とJAPANとのテストマッチを行いました。ライオンズが相手にJAPANを選んだこと自体がすごいことですし、結果も10-28で敗れたとはいえ立派なものでした。

 ところで、日本ラグビーはどうやってここまでの力をつけたと思いますか。昔からのラグビーファンには信じられないような進歩です。これまで日本はワールドカップ全大会出場しているとはいっても、第7回大会まではジンバブエ戦での1勝のみでした。イギリス、アイルランドの4協会に、フランス、NZ、オーストラリア、南アフリカといった、ティア1といわれる強豪国には全く歯が立たず、ワールドカップ以外ではテストマッチすらめったには組んでもらえませんでした。国内では早慶明、それから筑波といった大学ラグビーの人気が高く、社会人ラグビーはそれほどの人気がない。まさに日本ラグビーは井の中の蛙状態だったと言っていい状況でした。

 それが、2019年大会の日本開催に向けて様相が大きく変わってきました。思うにその肝は、世界のラグビーを知り追いつこうと、世界に出ていく、世界レベルを招く、ということを本気で取り組み始めたことにある。例をあげれば、JAPANの名SH田中史朗選手が世界最高峰のリーグであるスーパーラグビーのNZのチームに加入したり、2人の元オーストラリア代表監督がそれぞれサントリーやパナソニックの監督に就任するなど、世界的名将が直接日本選手を指導するようになりました。元オーストラリア代表SHや元NZ代表SOといった世界最高レベルの選手たちが日本でプレーするようになったことで、その生活やプレー、戦術、指導に触れる機会が一気に増えたことがとにかく大きかった。そして、2015年WCでのJAPANの躍進以降、ティア1とのテストマッチが大幅に増えたことで、世界レベルの相手を体感する経験を重ねたことが、JAPANの意識、気力・体力・精神力、さらにスキル、戦術を飛躍的に高めていくこととなったのではないかと思います。

 今や、2019年の日本大会でベスト8に入り、JAPANがティア1に仲間入りして、アウェーでライオンズやアイルランドと堂々とした戦いを見せるまでになっています。

 

 これを一般化してみます。成長するための肝は何だろう。それは、まずは本物を知り、本物の場に身を置き、本物に触れ合い、本物と勝負する、といった「機会をいかに掴み、そして活かすか」ということに尽きるのではないか。井の中の蛙ではだめなのである。この位でいいやと言っているようではだめなのではないか、ということです。

 実は、大学入試センターの研究でも教育社会学の立場から似た指摘がされています。大学入試センターですから大学進学についての研究ですが、自分の身の丈に合ったちょうどいいくらいの大学を目指したいという「身の丈大学志向」というのは、高校生活での学習時間の増加を妨げる方向へ作用する。つまり、自らに限界を設定し、将来の可能性を閉ざしてしまうことにつながりかねない、という指摘です。

 

 浦定で「浦定チャレンジ」と称して皆さんに自分で決めた課題にチャレンジしてもらうよう促しているのは、前にも言った通り、自分から一歩を踏み出してやってみる経験をたくさん積んでほしいからです。

 自分の実力を冷静に見極めることはとても重要なことですが、若いうちから勝手に限界を決めて自分で可能性を閉ざしてしまってはいけない。何かちょっとしたきっかけから自分の将来への展望が開けてくるということは、いくらでもあり得ることです。面倒だと思っていたことでも、やってみたらよかったという経験は多くの大人がしています。変に構えずに、これと思う誰かに話しかけてみる、自分の意見や思いを述べてみる、何かに参加してみるといったことに、勇気をもって一歩踏み出してみることが大事なのではないかと思います。

 ただ、そうするためには、踏み出そうと思えるものを見つけなければならない。でも、どこで何が見つかるかなどわからない。だから、日頃からアンテナを高く張って情報をキャッチする習慣をつけることが、まずは必要となります。自分の殻に閉じこもっていては、大切な情報をも遮断してしまいます。実際に踏み出すかどうかは別として、まずはいろいろな情報をキャッチしようと普段から思っていることが大事です。歩いているときも、くつろいでいるときも、遊びに行ったときも、目、耳、鼻といった五感を開放して、情報をキャッチできるよう心がけてみることをお勧めします。

 明日からは長い夏休みです。ダラダラしているとすぐに終わってしまうし、何かをやってみようと思うならやるだけの十分な時間があります。ぜひ有効に、有意義に過ごしてほしいと思います。

 コロナ禍の酷暑です。感染防止と体調管理にはくれぐれも留意して、9月1日にはまた元気で顔をそろえてほしいと思います。

 いい夏休みを過ごしてください。終わります。