2021年3月の記事一覧
3学期終業式
皆さんおはようございます。
令和2年度も終わりを迎えました。新型コロナウイルス感染防止に明け暮れた一年でした。でも、年度末になって、やっと体育館に全員集合しての終業式が実現しました。応援団も復活しました。もうしばらくは、感染防止策をしっかり講じつつの浦高生活となりますが、来年度に向けての大きな前進です。
去る3月11日で、あの東日本大震災からちょうど10年となりました。被災された方の心の傷は癒えることはないでしょうし、復興への道のりもまだまだ道半ばです。我々は、震災から得られた教訓を決して忘れることなく、これからの世の中に活かしていかなければなりません。10年が経った今、改めてそのことを確認しておきたいと思います。
皆さんは、自然への脅威を再認識することとなったこれらの事態や、目まぐるしく変化する激動の社会を目の当たりにしています。浦高OBの佐藤優さんは、最近の著書「新世紀『コロナ後』を生きる」で、「新型コロナウイルスの全世界的流行によって20世紀の残滓は消え、2020年から本当の21世紀が始まった、というのが私の作業仮説」だと書かれている。とすると、皆さんは本当の意味での新たな世紀の幕開けを、浦高生として迎えていることになる。では、新しい世紀とはどんな姿なのか。「それはわからない。海図なき時代こそが新しい世紀の特徴なのかもしれない。」と佐藤さんは続けています。
となれば、その姿を創り上げていく役を担うのは、将来の皆さんだということになる。少なくとも、これまでは通用していた前例を踏襲するだけの思考停止の策や、リスク回避、責任回避の策などが、全く通用しないであろうことは明らかですから、様々な試行錯誤を繰り返しながら、新たな姿を創造していく気概を持つことが求められます。
さて、3年次生は、先日立派に浦高を卒業していきました。浦高生活の最後の一年に大きな制約が課せられた中、彼らなりに奮闘して今春の大学入試では東大をはじめとする多くの大学への進学を決めました。一人一人が本当に良く頑張ったと思います。もちろん、あと一歩、あと1点が届かなかった生徒もいました。悔しい思いをしたはずです。でも、その悔しさが、次のチャレンジへの力になる。卒業生はもちろんですが、我々も皆さんも、その「あと一歩をどうするか」を、次なるチャレンジに生かすことが大事だと思います。
皆さんもこの一年、持って行き場のない不安や苛立ち、ストレスなどへの対処に苦労したことと思います。年度当初からの臨時休校、学校行事の多くが中止となり、部活動も大きく制限された結果、仲間とともに事を成す機会が失われ、切磋琢磨の機会も限られた一年となった。結果的に、学習時間が伸びて学習面ではプラスに作用した側面もあったかもしれない。まずは皆さんなりに、この一年の自分の生活を総括してみてほしい。
4月以降も、当面は一定の制約が続くことになる。でも、来年度は本来に近い浦高生活を皆さんに送ってもらえるよう、学校行事等の実施に向けて準備したいと思っている。そうなったとき、今年の経験も生かして、どのようにタイムマネジメントをするか。何を重視するか。一日、一か月、一年というスパンで、どうバランスをとるか。そこが、考えどころとなります。皆さん各自の責任と判断で、自分にとって最適といえるタイムマネジメントをしてもらいたいと思います。
それから、もう一つ。これから先の海図なき時代に、リーダとして活躍してもらいたい皆さんにとって、高校・大学時代というのは、その後の人生のための、盤石な土台をつくっておく時期にあたる。その意味で、これまでも指摘されているかとは思うが、「公共心」についてもう一度確認してみたい。
「公共心」とは、「公共のためを思う心」ということですが、平たく言えば「周りの人、他者、みんなへの気遣いができること」だと思います。そのための一つの視点として、公共空間における他者に対する想像力、つまり、自分の行動が周りの人にどう見えるか、どう影響を及ぼすことになりそうかを想像できるか、ということです。
わかりやすい例として、混雑している大宮駅のコンコースをイメージしよう。自分が進みたい方向と周りの人が進みたい方向がクロスしそうになることは、混んでいれば頻繁におこる。そのとき、互いが相手の進みたいと思われる方向を認識して、軌道がクロスするのを回避しようとすれば、無理なくスムーズにすれ違うことができるだろう。そんな意識を多くの人が持っていれば、混雑している中でも秩序ある流れが生まれたりする。これって本来、周りの存在を前提として、自分の行動とうまく折り合いをつけるという、極めて当たり前なことです。ところが、それがうまくいかずに、トラブルになる場面を見かけることもある。
何のことはない日常の一コマであるが、各個人の他者への想像力の有無が、こういった日常の一コマに顔を出したりするものだと思う。公共空間における周りの存在への想像力。皆さんには、想像力ある行動、振る舞いをしてもらいたい。ひょっとしたら想像力が乏しいかもと思った人は、今後はぜひ意識して行動してほしい。
蛇足ながら、人は余裕を失うと、自分の事を優先するあまり、ついついその想像力を放棄しがちになる。そして、気遣いができなくなる。だから、余裕のない集団は、どんどん荒廃していく。
前にも言った、「常に余裕を持つ」ということは、この点からも極めて大事であることがわかる。
これからの時代には、「臨機応変」に様々な「試行錯誤」を繰り返しながらも、「自分の頭で考え行動できる」ことが絶対の必要条件となる。来年度の自分の判断、振る舞い、行動で、ぜひとも実践してもらえればと思います。
4月8日、また元気で会いましょう。
第73回卒業証書授与式式辞
永い冬も終わりを迎え、やわらかな春の日差しのもと、早くも桜の開花する季節となりました。この春のよき日に、埼玉県立浦和高等学校第73回卒業証書授与式を挙行できますことを、心より嬉しく思います。
356名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。卒業生並びに保護者の皆様に心よりお祝いを申し上げます。新型コロナウイルス・パンデミックにより、本日保護者の皆様にはご臨席いただくことができませんでしたが、皆さんの卒業を何よりも喜んでくれていることでしょう。
さて、ちょうど十年前の3月11日、日本は東日本大震災に見舞われました。十年ひと昔とはいえ、被災をされた方々の生活がすべて日常に戻ったわけではありませんし、心に残った爪痕はそうそう癒えるものではありません。震災からの完全復興への道のりは、まだまだ道半ばです。私たちはこの震災を決して忘れることなく、防災意識の更なる醸成や危機管理体制の整備はもちろん、人と人とのつながりの大切さとその暖かみ、共助の意識など、この震災から得た様々な教訓をこれからの世の中に活かしていかなければなりません。
そして今、世界は新型コロナウイルス・パンデミックに見舞われています。世界がまさにつながっていることを改めて誰もが実感させられました。新型ウイルスの発生という自然現象に端を発して、一人一人の行動を介して世界全体に感染が拡大するという社会現象が起きました。震災と同様に自然の脅威を再認識させられる事態であり、一人一人がグローバルな社会での責任を自覚することを迫られています。皆さんのこの一年余りの浦高生活も、大きな制約が課せられたことで一変しました。持って行き場のない不安や苛立ち、ストレスなどへの対処に苦労したことと思います。
思えば、皆さんは入学早々の応援団による校歌指導に度肝を抜かれ、そのわずか一ヶ月後には中学生には未知の領域である10kmという距離に挑む新入生歓迎マラソンの洗礼を受けました。授業のレベルの高さとスピードに食らいつきつつ、部活動で身体が悲鳴を上げる毎日を過ごした人も多数いたことでしょう。体育祭、そして弓ヶ浜での臨海学校を経験し、夏休みを迎えたあたりでやっと浦高生らしくなってきた自分を感じはじめたのではないかと思います。そんな姿を見た保護者の皆様は、我が子が確実に成長していることを実感されたことでしょう。その後も、文化祭、各種スポーツ大会、文化大会、そして強歩大会、修学旅行と、様々な行事を楽しみつつ、2年次の終わり近くまで浦高生活を存分に満喫したことと思います。だから、パンデミックによる突然の臨時休校が長く続いても、制約のある中での生活規律や学習を自分の力で何とかやろうとし、事実、皆さんは立派にやり通してみせた。この一年は、すっきりしない未消化のままのようなモヤモヤ感が残ったことだろう。でも、皆さんは自分で立派に対処した。その力が皆さんには備わっているということです。だから、パンデミックの先行きはまだまだ不透明ですし、パンデミック収束後の21世紀がどのような世界になるのかも全くわかりませんが、それでも何とかなる、何とでもできるという強い気持ちを、ぜひ忘れないでほしい。
浦高の先輩である佐藤優氏は、最近の著書で「新型コロナウイルスの全世界的流行によって20世紀の残滓は消え、2020年から本当の21世紀が始まった、というのが私の作業仮説」であるとしたうえで、「新しい世紀において、新自由主義が世界を覆いつくすのか、そんなグローバリズムへの反動が来るのか、あるいはヨーロッパで先行して見られる環境ファシズムみたいな運動が力を持つのか、もしくは全然違った勢力地図が出来上がるのか、そこはわからない。そんな海図なき時代こそが新しい世紀の特徴なのかもしれない。」と述べています。
今という時代は、気候変動など地球自然環境の急激な変化や、少子高齢化、地域間格差などの深刻化とともに、AIをはじめとするデジタル革命とグローバル化が並行して急激に進行するという、まさに「激動の時代」であると同時に、本当の21世紀が始まる転換点でもあるようです。
そんな時代に浦高から次なるステップへと踏み出す皆さんに、私からの最後のメッセージを贈りたいと思います。
「知は力なり」などの名言を残したフランシス・ベーコンは、「高みに上る人は、皆螺旋階段を使う」という言葉も残しているそうです。世の中を見渡すと、経済性と効率ばかりが優先される傾向が見られます。いかに無駄なく、効率よく、最短距離を狙って結果を出すか。リスクを取らず、労力もかけず、楽して成果を上げるか。そのことが重視される傾向が強まっています。でも、それでは優れた人材は育たないし、真に価値ある優れたアイデアも生まれない。人が成長する上でも、普遍的な価値ある成果を生み出す上でも、成長や発展・進歩に至るまでには、様々な視点からの思考とアプローチ、たくさんのチャレンジと失敗、多様な学びと研究、検討が必要なことは明らかです。知的にも精神的にも、高みに上るためには、その土台となるすそ野を広くしておくことも必要です。一歩一歩確実に螺旋階段を上っていってこそ、高みに上ることができるというわけです。
ノーベル化学賞を受賞された白川英樹博士が、受賞当時よく話されていた「セレンディピティ」にしても、もちろん単なる偶然ではありません。価値ある偶然がおこったときに、その価値に気づき、価値を見出すことができたからこそ、その幸運を手に入れることができるわけです。それまでにたくさんの経験と努力を積み重ね、そして自分を信じ、物事に打ち込んだ人だからこそ、結果として適切な判断力や感性によって幸運をつかみ取ることができるわけです。
そのことをぜひ心に留めて、浦高から次のステップ、つまり大学では、とにかく真の「教養」の獲得と「人格」に磨きをかけてほしい。具体的には、学問に取り組む姿勢をしっかりと身に付けておくこと、そして大学という場で学問への探究心に更なる磨きをかけることに力を尽くしてほしい。大学生のうちに「とことん」やり抜いてみる経験が大切だということも覚えておいてほしい。「そこそこ」の経験を積みあげても、それだけではきっとあとで後悔する。これと決めた事には果敢にチャレンジして、ときには砕け散ることがあってもそこからまた立ち上がって、やり抜いてみることが大事です。そうやって身に付けていく自信や自負心が、その後の人生を生きていく上で必ずや大きな力になる。そのことを覚えておいてください。
最後にもう一つ。今年の大河ドラマの主人公にして新一万円券の顔となる、埼玉ゆかりの三偉人のひとり、渋沢栄一が残した言葉に、「交際の奥の手は至誠である。理にかない調和がとれていればひとりでにうまくいく。」というのがあります。キーワードは「至誠」、つまり「誠実」であることです。
物事に打ち込むうちには、失敗や挫折もある。迷うことも、悩むことも、落ち込むことも当然ある。高みに上るための螺旋階段の途中で、辞めたくなることもある。道を踏み外しそうになることも度々あるだろう。でも、「誠実」でさえあれば、物事はいずれ必ずや自然と上手くいくものである。そう信じて、ぜひ自らが望む高みを目指してもらえればと思います。
最後になりますが、オンラインでご覧の保護者の皆様におかれましては、ご子息のご卒業、誠におめでとうございます。重ねてお慶びを申し上げます。三年間の浦高生活を全うし、心身ともに大きく成長したタフで優しい卒業生諸君の姿を前にして、とても頼もしく思います。
この三年間、本校の教育活動につきまして格別のご支援とご協力をいただき、誠にありがとうございました。できますれば、今後とも浦高に対する変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
結びに、第73回の卒業生全員が、世界のどこかを支えるべく前途洋々たる人生を歩み、広き宇内に雄飛せんことを心より期待して、私の式辞といたします。
令和三年三月十七日
埼玉県立浦和高等学校長 水石明彦
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